いま読んでる本で、印象に残ったところがあったのでメモ

本当のエンジニアとは何か

「本当のエンジニアとは何か」という話をするときに、現場打ちコンクリートの話をします。標準的な構造計算であれば、与条件とプログラムさえコンピューターに入力すれば、あとは解析結果を待つだけで誰でもできます。しかし実際の現場では、それだけでは足りません。現場では様々な事態が発生します。計算通りにいかないこともたくさん出てきます。結論を言えば、想定外、予想外のことが起きた時に、的確な判断を下せるのが本当のエンジニアです。
 ひとつの例をあげると、コンクリートを打設しようとしている時に小雨が降ってきたとします。現場を管理するエンジニアは、どの程度の雨でコンクリートを打設するか中止を判断し、決めなくてはなりません。雨の中で打設すれば品質は落ちます。しかし、打設を中止すれば、列をなして待っているミキサー車や、ときには数百人が待機している現場の準備態勢がすべて無駄になってしまいます。雨の状態を見て判断する必要に迫られます。しかし、後々構造体に禍根を残すと判断した場合は、中止する勇気と決断が必要です。その人と経験と見識でその現場を止められるかどうかです。それが本当の意味でのエンジニアだとわたしは思っています。計算が要領よくできたり仕事を適当にさばけたりするのが本当のエンジニアではなく、工学的な境界線に立った時、予想外のことが起きた時に適切な判断ができるが本当のエンジニアというものです。本当のエンジニアというのは、こうしたことが判断できる経験と見識と倫理が備わった人間のことを言うのだと思います。